「樹海村」はどんな映画?
今回ご紹介するのは「樹海村」です。
この作品は2021年に公開された、清水崇監督作品です。
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目次
作品情報
監督 | 清水崇監督 |
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公開年 | 2021年 |
製作国 | 日本 |
上映時間 | 117分 |
キャスト | 山田杏奈(天沢響) |
キャスト | 山口まゆ(天沢鳴) |
あらすじ
天沢鳴と妹の響は、友人の阿久津輝と、その恋人の片瀬美憂の引っ越しの手伝いに行った際に、新居の床下から不気味な箱を見つけます。
その箱を見つけてから、彼らの身の回りに不幸が訪れます。
この出来事の元凶はこの箱だと考え、鳴の恋人、鷲尾真二郎の父であるお寺の住職にお祓いを依頼するのですが・・・
清水崇監督
呪怨 | (2003)監督・脚本 |
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THE JUON/呪怨 | (2004)監督 |
魔女の宅急便 | (2014))監督・脚本 |
樹海村 | (2020)監督・脚本 |
ホムンクルス | (2021)監督・脚本 |
清水崇監督は1972年生まれ、群馬県出身です。
2001年に「富江 re-birth」で映画監督としてデビューし、2002年には自身が監督したビデオ作品「呪怨」が映画化され、監督を務めます。
「呪怨」と、その続編である「呪怨2」が国内外でヒットすると、2004年にはハリウッド版リメイク作品「JUON/呪怨」が製作されます。
そのハリウッド版「JUON/呪怨」のメガホンも清水崇監督が取る事となり、日本人監督として初めてのハリウッドデビューを果たします。
その後も、数々のホラー作品を監督しますが、2014年には「魔女の宅急便」の実写映画の監督も務めており、ホラー作品だけを撮る監督さんだけでないことを証明しました。
2020年からは「犬鳴村」「樹海村」「牛首村」と「村」を題材とした作品のシリーズを監督され、話題となりました。
キャスト
霊感の強い少女、天沢響を演じるのは、山田杏奈さんです。
2016年公開の「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」で映画デビュー。2018年「ミスミソウ」で映画初主演を務めます。その他では「小さな恋のうた」(2019)や「ひらいて」(2021)などがあります。
天沢響の姉、天沢鳴を演じるのは、山口まゆさんです。
出演作は「くちびるに歌を」(2015)や「軍艦少年」(2021)などがあります。
他にも、國村隼さんや安達祐実さん、黒沢あすかさんなどのベテラン俳優さんたちが脇を固めます。
ウサコックのおいしさ(おもしろさ)指数
1ウサコックです。(最高4ウサコック)
ネットで有名な怪談「コトリバコ」と、樹海にあるとされる「樹海村」という怪村を組み合わせた作品ですが、「コトリバコ」と「樹海」という組み合わせの相性が非常に悪いように感じました。
その2つの「都市伝説」を掛け合わすことによって怖さが倍増するかといえばそうではなく、逆に嘘っぽくなりすぎてリアリティが薄れてしまい、両方の良さ(怖さ)がなくなってしまったと個人的に感じたため、評価を下げました。
カプサ君の激辛(マニア度)指数
カプサ君の数が多いほど、マニア向けの作品となっております。
2カプサ君です。比較的見やすい作品です。
目をそむけるような場面は少しありますが、それほど怖さはありません。グロさも抑えめとなっており、ホラー映画が好きな方は、少し物足りないかもしれません。
動画配信
Amazon Prime Videoで配信されています。
感想と考察(ネタバレあり)
その①
ネット怪談 コトリバコ
作中に出て来る「コトリバコ」は2005年に「2ちゃんねる」(当時)に投稿されたネット怪談です。
昔、迫害を受けていた村が、迫害を止めさせる為に作った呪物が「コトリバコ」です。
「コトリバコ」は木を組み合わせて作られた箱の中に、大量の動物の血と死んだ子供(貧しいこの村では、生きていくために自分の子供を「間引き」、すなわち殺さなければならなかった)の指を入れて作ります。その犠牲となる子供の数が多いほど、「呪い」の威力が上がります。
「コトリバコ」は「子取り箱」という意味で、その「呪い」の対象者は妊娠可能な「女性」と「子供」です。「コトリバコ」を触れたり、近くにいるだけで、内臓がちぎれて死ぬという恐ろしい「呪物」です。
迫害を受けていた地域の庄屋の家にこの「コトリバコ」を上納したところ、この庄屋の家にいた女性と子供はみんな死んでしまったそうです。
この「コトリバコ」の怖さは、本当にあるのでは?と思わせる「リアルさ」です。まず、ネットの掲示板への書き込みだという点、そして具体的な場所は伏せているがその地域が特定できる点など、サジ加減が絶妙です。
しかし映画「樹海村」にはこの「リアルさ」が欠けているように思えます。
設定は同じでも、この「樹海村」に出て来る「コトリバコ」には怖さが感じられません。ホラー映画で大切なのは「リアルさ」だと思います。一度冷めた目で作品を観てしまうと、そこから再び作品に入り込むことは非常に困難です。
そういった点でいえば、「樹海村」と「コトリバコ」という2つの都市伝説を組み合わせることが良かったとは私は思えませんでした。
その②
「コトリバコ」の呪いとは?
この作品での「コトリバコ」の呪いは、置かれた家に住んでいる人間、老若男女問わずみんな死んで家系が絶たれるという呪いです。
響と鳴の母親である琴音は「コトリバコ」を樹海に戻し、自身の命を犠牲にして子供たちを助けました。
しかし、その後、響と鳴の前に再び「コトリバコ」が現われます。また、鳴の子供であるねねの前にも箱は現れました。
このことから、「コトリバコ」は樹海に戻しても呪いが収まることはないのではないでしょうか?そうでなければ、「コトリバコ」がこの一族に固執する理由がわからないからです。この一族の家系が断たれるまで呪いは続くのだと考えます。
また、「コトリバコ」の呪いの効力はネット怪談と同じように、時間の経過により弱くなるのだと思います。呪いの力を持続し続ける為には、ハコに新たな「指」を入れ、呪いの力を維持しなければなりません。
そのために、樹海村に足を踏み入れた者や、箱を使って呪い殺した者の指を切り、箱に入れ続けているのだと推測します。
その③
海外向け?
「樹海村」に住んでいた人々の霊は「樹」と同化した樹人間として姿を現します。
最初にこの「樹人間」が登場したのはYoutuberの明菜が中継中に倒れた時です。そしてこの樹人間がカメラを持ち上げて電源を切ります。
これを見た時、私はがっかりしました。
この作品に出て来るのは「心霊」ではなく「モンスター」だからです。
樹人間のような、樹が人間を襲う作品は海外の作品に多いように思います。また、こういった「樹人間」が登場するのは主にダークファンタジーの作品です。
個人的に、心霊系作品に欠かせないのは「リアリティー」だと思っています。実際に見えなくても、現実にいるかもしれないと思わせるようなそんな怖さを楽しみたくて、心霊物の作品を観ています。
あと、「心霊」は物理的に触れることができないと考えています。唯一、触れることができるのは、呪いの対象者に危害を加える時だけです。あくまでも「心霊」には知能や思考はなく、怨念のような意識だけの存在と個人的に定義しています。
しかし、この「樹人間」は「カメラを持ち上げ電源を切る」という行為をしました。この行為は、「樹人間」は実体があり、なおかつ知能がある存在のように見えました。この行為によってこの存在は、私の中でもう「心霊」ではなくなりました。
また、樹海に入ってきた人たちを樹の上で殺したり、樹に取り込まれて殺されているという演出も「ジャパニーズホラー」というより、海外の「ダークファンタジー」のように感じ、「ジャパニーズホラー」にあるべき「怖さ」がなくなっているように思います。
このような演出は、今までにあったような「ジャパニーズホラー」からの脱却という見方もできますが、個人的には、日本のホラー作品の市場を、日本のみならず海外に広げていくという思惑があるように感じました。
海外の人にも作品に入りやすいように、海外で馴染みの深い「ダークファンタジー」的な「樹人間」や、まるで「ゾンビ」のような霊の大群が登場しているように思えました。
また、この作品の舞台になった「樹海」は、2016年のアメリカ作品「JUKAI」の舞台になりましたし、またアメリカ人Youtuberローガン・ポール氏がこの樹海で自殺者の遺体を撮影して物議を醸したりと、海外でも名の知れた場所です。
そういった海外向けの設定だけでは日本の集客が見込めないので、日本人向けとして「コトリバコ」の話を取り入れたように感じます。
そのため、本来持っていた「コトリバコ」の怖さが薄れ、ダークファンタジー色が濃い作品になってしまったのではないか?というのが私の見解です。
最後に
前作「犬鳴村」に続き、個人的には物足りない作品でした。
「樹海」と「コトリバコ」という組み合わせもあまりよくなく、両方の設定を持て余しているように感じます。
ハリウッドで監督経験のある清水崇監督が「ハリウッド」での経験を活かし、新たな「ジャパニーズホラー」を描くという形でこのシリーズが作られているしたら、それに私が対応しきれていないだけなのかもしれません。
個人的には、それがフィクションとはわかっていても、「ファンタジー」ではなく、「リアル」にこだわって欲しいと思いました。