「アニエスによるヴァルダ」はどんな映画?
今回、ご紹介する作品は「アニエスによるヴァルダ」です。
この作品は2019年に製作されたアニエスヴァルダ監督作品です。
アニエス・ヴァルダ監督の遺作となり、アニエスヴァルダ監督のすべてが詰まった作品と言っても過言ではありません。
目次
作品情報
監督 | アニエス・ヴァルダ |
---|---|
製作年 | 2019年 |
製作国 | フランス |
キャスト | アニエス・ヴァルダ |
上映時間 | 119分 |
あらすじ
アニエス・ヴァルダ監督が自身の作品を振り返り、構造や意図を解説するドキュメンタリー作品です。
映画作品はもちろんの事、日本では見る事のできないビジュアルアート作品も登場します。
アニエス・ヴァルダ監督
代表作
ラ・ポワント・クールト | (1954)監督 |
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5時から7時までのクレオ | (1961)監督 |
幸福 | (1964)監督 ベルリン映画祭銀熊賞受賞 |
ダゲール街の人々 | (1975)監督 |
アニエスv.によるジェーンb. | (1987)監督 |
百一夜 | (1994)監督 映画誕生百年記念作品 |
アニエスによるヴァルダ | (2019)監督 |
元々写真家として活動していたアニエス・ヴァルダ監督は、1954年にデビュー作「ラ・ポワント・クールト」を自主制作で発表します。
この作品は全編屋外で撮影されました。当時の映画は、スタジオでセットを組んで撮影するのが常識だったので、この作品はとても斬新な作品だったといえるでしょう。
この作品が発表された後、1950年代後半にフランス映画における映画運動、「ヌーベルヴァーグ(新しい波)」が始まります。
「ヌーベルヴァーグ」とは、撮影所などでの下積み経験なしでデビューした若手監督による、これまでの映画制作の手法に囚われない新しい映画を作ろうとした映画運動です。
「ヌーベルヴァーグ」の作品では、ロケ撮影や、同時録音、即興演出など、これまでの映画とは違った方法で映画を制作しました。
この「ラ・ポワント・クールト」はヌーベルヴァーグに先立つ先駆的作品となり、アニエス・ヴァルダ監督は「ヌーベルヴァーグの祖母」と呼ばれるようになります。
1962年には映画監督であるジャック・ドゥミと結婚しました。
夫であるジャック・ドゥミ監督の代表作は、「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人たち」です。これらの作品は、これまでのミュージカル映画に新風を吹込みました。
また、アニエス・ヴァルダ監督は、フィクションの作品だけでなく、ドキュメンタリー作品も数多く発表しています。
「リアル」を表現する写真家としての視点が、ドキュメンタリー作品に反映されているように感じます。
晩年には、私たちに「ビジュアル・アーティスト」としての一面を見せてくれました。
「ビジュアル・アーティスト」としての活動として、2003年にジャガイモをテーマにした「パタテュートピア」や、2006年にカルティエ現代美術財団の依頼で、夫、ジャック・ドゥミと過ごした思い出の島、「ノワールムーティエ」をテーマとした展覧会「島と彼女」を手掛けます。
2015年には、カンヌ映画祭名誉パルムドールを、2017年には米アカデミー賞名誉賞を受賞しました。
そして、2019年3月、90歳で人生の幕を閉じられます。
キャスト
アニエス・ヴァルダ監督が様々な劇場であったり、浜辺であったり、自身の作品のゆかりの地で、作品にまつわるゲストを交えながら作品の解説をしていきます。
ウサコックのおいしさ(おもしろさ)指数
4ウサコックです。 (最高4ウサコック)
残念ながら、この作品がアニエス・ヴァルダ監督の遺作となります。
この作品はアニエス・ヴァルダ監督の人間としての魅力、アニエス・ヴァルダ監督作品の魅力が詰まっており、夫であるジャック・ドゥミ監督への愛や、映画やアート作品を愛する者へのメッセージなど、アニエス・ヴァルダ監督の人生そのものといっても過言ではない作品です。
アニエス・ヴァルダ監督の作品についての解説を聞いていると、アニエス・ヴァルダ監督の作品をもう1度見直したくなりました。
大好きな作品です。
カプサ君の激辛(マニア度)指数
カプサ君の数が多いほどマニア向けの作品となっております。
3カプサ君です。映画好き向け作品です。(最高4カプサ君)
アニエス・ヴァルダ監督が自身の作品を振り返り解説するドキュメンタリー作品です。
アニエス・ヴァルダ監督作品を観たことがない方でも、その作品のシーンを見ながら解説しているので、「過去の作品を観てないからまったく訳がわからない」という事はありません。
しかし、アニエス・ヴァルダ監督作品を観てから、この作品を鑑賞した方がより楽しめると思います。
ただ、とても見やすい作品ですし、観終わったらアニエス・ヴァルダ監督作品を観たいと思う事間違いありません。
感想と考察(ネタバレあり)
その①
アニエス・ヴァルダという女性
アニエス・ヴァルダのいう1人の女性の、映画監督であり、写真家であり、ビジュアル・アーティストであり、母であり、妻である、そんな様々な表情を見る事ができる作品です。
この作品を観るまで、写真家であったことや、ビジュアル・アーティストとしての活動をしていた事はまったく知りませんでしたので、とても興味深く鑑賞しました。
2000年公開の作品「落穂拾い」から派生した「パタテュートピア」というジャガイモをテーマにした展示会では、ハート型のジャガイモをクローズアップした作品を撮ったりだとか、アニエス・ヴァルダ監督がジャガイモの着ぐるみを着たりしているところに乙女心を感じました。
しかし、過去の映画作品の解説などを聞いていると、知的で綿密な構成で作品を作られています。
このギャップがアニエス・ヴァルダ監督の魅力の1つなんだなと感じました。
また、アニエス・ヴァルダ監督の白と赤のツートンカラーのボブスタイルの髪型が素敵でした。
こんなおしゃれな90歳、魅力的すぎます。
その②
ひらめき、創作、共有
アニエス・ヴァルダ監督は映画作りを3つの言葉で表しています。
まずは「ひらめき」
創造的欲求を誘発する刺激や出来事やアイディア
この作品との出会いは、まさに創造的欲求を誘発する刺激です。
そして「創作」
アイディアを形にするための最善の手段、描き方
最後に「共有」
自作を見てみてくれる人、観客
自己満足な作品にしない。客観的に作品を考察する。
この3つの言葉は映画だけでなく、すべての芸術作品に当てはまる言葉だと思います。
最後の「共有」という言葉が、とても印象的で素敵な言葉だと感じました。
最後に
この作品はアニエス・ヴァルダ監督の遺言とも言えます。
自分の作品を通して、これまでの人生を振り返っています。この作品を遺作にすると決めていたのかもしれません。
本当に最後まで素晴らしい作品を撮る監督さんでした。
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