「犬鳴村」はどんな映画?
今回ご紹介するのは「犬鳴村」です。
この作品は2020年公開の作品で、監督は「呪怨」(2003)などホラー作品も数多く監督をしている清水崇監督です。
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目次
作品情報
監督 | 清水崇 |
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公開年 | 2020年 |
製作国 | 日本 |
上映時間 | 108分 |
キャスト | 三吉彩花(森田秦) |
キャスト | 坂東龍汰(森田悠真) |
あらすじ
悠真は恋人の明菜と、「犬鳴村」の都市伝説を確認すべく、犬鳴トンネルに訪れます。
トンネルの奥に「犬鳴村」を見つけ、2人は村に入っていくのですが、そこで様々な心霊現象に遭遇します。
命からがら逃げ戻った2人ですが、家に戻ってから明菜の様子がおかしくなります。
そこで悠真は、幼い頃から霊感が強く、臨床心理士として働いている妹の奏に相談するのですが・・・
清水崇監督
呪怨 | (2003)監督・脚本 |
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THE JUON/呪怨 | (2004)監督 |
魔女の宅急便 | (2014))監督・脚本 |
樹海村 | (2020)監督・脚本 |
ホムンクルス | (2021)監督・脚本 |
清水崇監督は1972年生まれ、群馬県出身です。
2001年に「富江 re-birth」で映画監督としてデビューし、2002年には自身が監督したビデオ作品「呪怨」が映画化され、監督を務めます。
「呪怨」と、その続編である「呪怨2」が国内外でヒットすると、2004年にはハリウッド版リメイク作品「JUON/呪怨」が製作されます。
そのハリウッド版「JUON/呪怨」のメガホンも清水崇監督が取る事となり、日本人監督として初めてのハリウッドデビューを果たします。
その後も、数々のホラー作品を監督しますが、2014年には「魔女の宅急便」の実写映画の監督も務めており、ホラー作品だけを撮る監督さんだけでないことを証明しました。
2020年からは「犬鳴村」「樹海村」「牛首村」と「村」を題材とした作品のシリーズを監督され、話題となりました。
キャスト
主人公の秦を演じるのは、三吉彩花さんです。
三吉彩花さんはモデルとして活躍後、2012年「グッモーエビアン!」で女優デビューすると、2013年「旅立ちの島唄~十五の春~」で「第35回ヨコハマ映画映画祭」最優秀新人賞受賞されています。
その後も「ダンスウィズミー」(2019)や今作「犬鳴村」で主演を務めるなど、女優として活躍されています。
秦の兄の悠真を演じているのが、坂東龍汰さんです。
出演は、「十二人の死にたい子供たち」(2019)でのセイゴ役や「弱虫ペダル」(2020)での鳴子章役があります。
他では、秦の父親役に高嶋政信さん、母親役には高島礼子さん、祖父役に石橋蓮司さんと、脇を固める俳優陣が、実力派の怪演俳優さんばかりですので、その演技にも注目です。
また「呪怨」で出演していた奥菜恵さんも出演しており、「呪怨」ファンにはたまらないキャストとなっております。
ウサコックのおいしさ(おもしろさ)指数
2ウサコックです。(最高4ウサコック)
個人的には、それほど怖くありませんでした。
私が心霊物で怖いと感じる作品は、感情移入し過ぎてしまい、観終わった後お風呂に入るのが「ちょっと怖い」と感じてしまうような作品です。
しかし、この作品を観終わったときにそういった怖さは感じませんでした。
前半は楽しめたのですが、後半になるにつれ面白さが半減しました。個人的に期待外れな内容でした。
カプサ君の激辛(マニア度)指数
カプサ君の数が多いほど、マニア向けの作品となっております。
2カプサ君です。 比較的に見やすい作品となっております。
理由としては、あまり怖さは感じなかったのと、グロさもそれほどだったので、ホラー映画としては見やすい作品だと感じました。
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感想と考察(ネタバレあり)
その①
実在の心霊スポットと都市伝説
この作品に登場する「犬鳴村」はネットによって有名となった「犬鳴村伝説」という都市伝説をモチーフとして作られています。
「犬鳴村伝説」で語られている「犬鳴村」はどんな村なのでしょうか?
「犬鳴村」は福岡にある旧犬鳴トンネルの近くにあるとされる村です。
江戸時代に迫害を受けていた人々が住み始めた村で、外部との交流を絶ち、地図にも載っていない村です。
村の入り口には「この先、日本憲法通用せず」という看板が立っており、携帯電話は圏外となり使うことができません。
さらに進んでいくと、古い小屋があり、小屋の周りには死体らしきものが積まれているそうです。
村の周りには、紐と缶で作られた音の鳴る仕掛けがあります。
その仕掛けに引っかかると、その音を聞いた村人たちが斧や鎌を持って現れ、捕まると殺されます。
面白半分でこの村に入ったカップルが惨殺されたという話もあります。
しかし、この「犬鳴村伝説」は心霊の話ではありません。
心霊の逸話は「旧犬鳴トンネル」にあります。
「旧犬鳴トンネル」は、福岡にある実在するトンネルです。この作品のエンディングで出て来るトンネルが実際の「旧犬鳴トンネル」です。
この「旧犬鳴トンネル」では若者たちが集団リンチを行い、ガソリンをかけ焼殺するという事件が起こったり、肝試しに来た若者の死亡事故が多発したり、近くの犬鳴ダムで死体遺棄事件が起こったりと、「死」に関連する事件が数多く起こったため、「旧犬鳴トンネル」は日本最恐の心霊スポットと言われています。
「旧犬鳴トンネル」の心霊の要素と、「犬鳴村伝説」の伝説の村の要素を掛け合わして、この作品が作られています。
その②
なぜ「犬鳴村」が現れるのか?
「犬鳴トンネル」の奥にあるとされる「犬鳴村」に入るには、午前2時に鳴る公衆電話に出なければなりません。電話を出ることで、「犬鳴村」への道が開かれます。
しかし、電話に出ても、悠真の友人たちのように殺されることもあります。
なぜ悠真の友人は呪い殺され、悠真と明菜、そして秦は「犬鳴村」に入れたのでしょうか?
それは、「犬鳴村」の子孫だからだと考えられます。
「犬鳴村」の子孫以外の人間がこの電話を使うと、呪いが発動し殺されるのではないでしょうか?
明菜の場合は、お腹に悠真の赤ちゃんがいたため、「犬鳴村」の子孫と認定されたと考えられます。
ではなぜ、「犬鳴村」の子孫だけ「犬鳴村」に入れる仕組みを作ったのでしょうか?
この「犬鳴村」に入るための電話の仕掛けを作ったのは、秦のひいおじいさんである「成宮健司」だと推測します。
「成宮健司」は人々の記憶から抹消された「犬鳴村」の存在を自分の子孫たちに伝えたかったのではないかと思います。
「犬鳴村」の存在を子孫に伝えることで、人知れず殺された「犬鳴村」の村人たちのさまよえる魂(特に龍井摩耶)を成仏させようとしていたのではないでしょうか?
最後、悠真は妹弟たちを守るため命を落とします。
そして悠真の死体の足には「成宮健司」と「龍井摩耶」の死体がしがみついていました。
「成宮健司」と「龍井摩耶」2人の死体が見つかったということは、2人の魂は「犬鳴村」の呪縛から解き放たれた(成仏した)と考えていいと思います。
その③
2つの呪い
この作品の中では、たくさんの人が呪いによって溺死させられています。
しかし、この呪いは同じものではなく、2つの種類の呪いがあると考察します。
まず1つ目の呪いは村人たちの怨念による呪いです。
この呪いの対象者は村人を騙した開発者である「森田家」の一族、またはそれに近しい人々です。
それに近しい人々としたのは、山野辺先生は「森田家」の一族ではありませんでしたが、呪いによって殺されました。
「森田家」の人間の変死を何件も山野辺先生が看取ってきたということは、「森田家」と相当近しい間柄だったと思います。
もしかすると、山野辺家の人間も「犬鳴村」の事件に関わっていたのかもしれません。
この呪いが、年齢で発動するのか、何年かに1人ずつ死ぬ呪いなのか、その発動条件は不明です。
ただ、「犬鳴村」の存在を知る人間を何人か殺さずにいる事は確かです。
なぜなら、みんな殺してしまうと、「犬鳴村」の存在が忘れ去られてしまうからです。
2つ目は、「成宮健司」が仕掛けた電話ボックスの呪いです。
「犬鳴村」の子孫以外がこの電話を使用すると、呪いが発動します。またこの電話からの着信を取った相手にも呪いは有効です。
悠真の友人たちや明菜は、この呪いによって命をおとしました。
明菜の場合、お腹に赤ちゃんがいる状態では「子孫」と認定され、呪いは発動しませんでした。
しかし、村から逃げ戻った際にお腹の赤ちゃんが死んでしまい、血のつながりがなくなった明菜に呪いが発動したのだと推測します。
もし、お腹の赤ちゃんが生きていたとしても、子供を産んだ瞬間に明菜は呪いの対象となり死んでしまったのではないでしょうか。
ですので、「森田家」や山野辺先生の死と、悠真の友人たちや明菜の死は、同じように見えて違う種類の呪いだと考えます。
その④
「心霊」から「モンスター」へ
この作品において、個人的にあまり好みでない展開が、「犬化」です。
「犬鳴村」の女性たちは犬と交わされていました。そのためか、「犬鳴村」の子孫は牙が生えたり、黒目が大きくなったり「犬化」します。それはまるで「犬鳴村」の子孫であるという刻印を押されたようにも感じました。
「犬鳴村」から脱出する際、摩耶の霊も「犬化」していました。
摩耶は霊にもかかわらず、犬化しています。摩耶の怨念が犬の霊を取り込み、融合したということでしょうか?
古くから日本では動物霊に憑りつかれ、人が動物のような行動を取るような表現はよくあります。(秦のお母さんのように)
しかし、牙が生えたり、黒目が大きくなったりと、肉体的な変化が起こることは、さすがに現実的ではありませんし、ちょっと冷めてしまいました。
このように人の体に変化が起こるのは、海外の作品に多いように思われます。
例えば、狼男です。狼男は満月を見ると人間から毛むくじゃらの狼男に変身します。
変身しまうと、もはやその人は「人間」ではなく「モンスター」と見なされます。
しかし、この作品で「犬化」していても、2人は「人間」であって、決して「モンスター」ではありません。
「モンスター」でない普通の人が、「犬化」するのに少し疑問を感じました。
このような演出を見ると、海外での評価を気にして作られているように思えてなりません。
「呪怨」がハリウッドでリメイクされ、世界中でヒットしました。今作も映画完成前にもかかわらず、世界中の映画会社からオファーが殺到していたそうです。
そういった話を聞くと、海外でも受けるように、海外で馴染みの深い「狼男」や「ゾンビ」のような設定、演出をあえて取り入れたのでは?と考えてしまいます。
最後、悠真が兄弟を逃がすシーンで、犬化した摩耶を悠真が押さえつけていました。
心霊を人間のように押さえつけることができることに少し驚きました。
異空間だから、霊に触れることができるのかもしれませんが、この演出によってジャパニーズホラーとしての「心霊」の作品ではなく、ハリウッドなどでよくある「モンスター」の作品になってしまったような気がしました。
前半は「心霊」の作品だったのが、後半は「モンスター」の作品へと変貌して行くにつれ、怖さが半減していったというのが、正直な感想です。
最後に
この作品は実在する心霊スポットと、インターネットにより有名になった都市伝説とを融合したお話です。
最後の悠真の足に死体がしがみついているエピソードも、稲川淳二氏の怪談「海に潜む者」のオマージュでした。
このように、ネットにおいて有名な怪談を作品に取り入れているので、もっと怖い作品になってもよさそうなのですが、「犬」の部分を強調し過ぎたせいもあり、本来怪談話が持っているリアリティーが失われてしまい、まったく怖さがありませんでした。
ハリウッドのリメイクを狙っているのか、海外での公開を増やすためなのか、西洋向けになっている感があり、「呪怨」のような日本的な怖さがなくなっているのが個人的には残念です。
この作品のジャケットを遠くから見ると犬の顔のようになっているのですが、猫とは違い、犬に「怖い」とか、「不気味だ」といった印象がなく、ただただ「かわいい」という印象しかないのも怖くない原因の1つだと思います。もしこれが犬ではなく猫だったら、もう少し怖かったのかもしれませんね。
また、この作品には、ホラーが苦手な人向けの「恐怖回避ばーじょん」という作品があります。
この「恐怖回避ばーじょん」は、怖いシーンで、かわいい犬のスタンプが押されたり、面白いセリフやテロップが付いたり、笑いを誘うような効果音やエフェクトがかかったりするコメディー作品となっています。
こちらの作品も清水崇監督が監修されているそうです。
おもしろい試みだと思いますが、もし自分の好きな作品に、このような茶化されたバージョンが出たとしたら、とても悲しい気持ちになると思うので、個人的にこういったパロディー作品は、あまり好きではありません。
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