「モンソーのパン屋の女の子」はどんな映画?
今回ご紹介するのは「モンソーのパン屋の女の子」です。
この作品は1963年製作のフランス映画で、監督はエリック・ロメールです。
目次
作品情報
監督 | エリック・ロメール監督 |
---|---|
製作年 | 1962年 |
製作国 | フランス |
上映時間 | 24分 |
キャスト | バルべ・シュローデル |
キャスト | ミシェル・ジラルドン(シルヴィー) |
あらすじ
ある学生の男が、よく道ですれ違う女性に恋をします。
ある日、男はその女性と話をすることに成功するのですが、その日以来彼女の姿を見かけなくなります。
そこで男は、彼女が住んでいるであろう場所の辺りを徘徊するようになり、その近所のパン屋さんの常連となるのですが・・・
エリック・ロメール監督
エリック・ロメール監督は1950年代に始まった映画運動「ヌーヴェル・ヴァーグ」を代表する映画監督です。
エリック・ロメール監督は、何本かの作品を連作として1つのシリーズとしているのが特徴の1つです。
1960年代から1970年代にかけて「六つの教訓話」シリーズと題して6つの作品を発表しました。
1980年代には、「喜劇と格言シリーズ」として6作品、また、1990年代には「四季の物語」シリーズとして、春夏秋冬を描いた4作を発表しています。
「六つの教訓話」シリーズ
モンソーのパン屋の女の子 | (1962)主演 バルべ・シュローデル |
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シュザンヌの生き方 | (1963) 主演 ジャン・ルイ=トランティニャン |
コレクションする女 | (1967) ベルリン国際映画祭 銀熊賞 審査員グランプリ |
モード家の一夜 | (1969) 主演 ジャン・ルイ=トランティニャン |
クレールの膝 | (1970) 主演 ジャン=クロード・ブリアリ |
愛の昼下がり | (1972) 主演 ベルナール・ヴェルレー |
「六つの教訓話」は2人の女性の間で、感情が揺れ動く男性のお話が題材となっています。
キャスト
主人公の学生の男を演じるのは、バルべ・シュローデルです。
バルべ・シュローデルは、1962年エリック・ロメールと共に映画製作会社「レ・フィルム・デュ・ロサンジュ」を創立。そして、同社製作の1作目がこの作品です。
また、彼はこの作品のプロデューサーも務めており、この作品以降もプロデューサーだけでなく、監督業や俳優業など多岐にわたって活躍されます。
バルべ・シュローデルは主人公の学生の男を演じているのですが、セリフの録音時に日程の都合が付かなかったため、声はベルトラン・タヴァルニエが担当しています。
男が恋する女性、シルヴィーを演じるのは、ミシェル・ジラルドンです。
彼女は1956年、ルイス・ブニュエル監督の「この庭に死す」でデビュー。その後、ルイ・マル監督の「恋人たち」(1958)や、ハワード・ホークス監督の「ハタリ!」(1961)などに出演します。
ウサコックのおいしさ(おもしろさ)指数
2ウサコックです。(最高4ウサコック)
個人的に主人公に共感できなかったので評価を下げました。
カプサ君の激辛(マニア度)指数
カプサ君の数が多いほど、マニア向けの作品となっております。
3カプサ君です。 映画好き向け作品です。
1962年製作でモノクロの短編作品ですので、映画好きでなければ、敷居の高い作品だと思います。
しかし、いざ見てみると、主人公の心情はセリフで語られているため、とてもわかりやすいですし、また「恋愛」を題材にしている作品なので、今観ても楽しめる作品だと感じました。
感想と考察(ネタバレあり)
その①
サブレとシェフのお菓子
男はパン屋さんでサブレを買うのが日課になっていました。
しかし、男のサブレに対する評価は「平凡な味」です。
このサブレは、パン屋で働く女の子ジャクリーヌを表わしています。
ジャクリーヌはどこにでもいるような女の子です。悪く言えば「平凡」といえるでしょう。
男は、平凡な味と言いながら毎日サブレを買って食べています。食事ではなく、あくまでも間食としてです。
男のジャクリーヌの評価はサブレと同じで、彼女ができるまでのつなぎ、つまり食事前の間食程度にしか考えていません。
男の恋する女性であるシルヴィーも、彼と同じくジャクリーヌを見下しています。
2人が食事をするシーンで、そのことがわかります。
男とシルヴィが食事をしている時、シルヴィは「通りにいる男の様子を家から見ていた」と言います。そしてこう続けます。
「あんなサブレーじゃ胃に悪いわ」
男は素直に「でもおいしいよ」と答えるのですが、シルヴィの真意は別にあると考えられます。
おそらくシルヴィーは、男がジャクリーヌを口説いているのを見ていたのでしょう。そして、ジャクリーヌをサブレに例え、「そんな平凡な女の子といてもつまらないわよ」という意味で「あんなサブレーじゃ胃に悪いわ」と言っています。
その後、男に「何を食べる?」と聞かれたシルヴィーは「シェフのお菓子」と答えます。この、「シェフのお菓子」はシルヴィー自身のことを表わしています。「サブレ」みたいな平凡な女の子と付き合わずに、「シェフのお菓子」のような、特別な私と付き合いなさいというシルヴィーのメッセージです。
このやり取りを見て、シルヴィーの性格がなんとなくわかったような気がしました。
まあ自己評価の高い2人同士、いいカップルと言えるのかもしれません。
その②
ゼンマイ式のカメラ
この作品を観て感じたのは、他のエリック・ロメール監督の作品と比べると、カット割りが細かいということです。1つのショットの長さが最長でも30秒弱程度です。
その原因はカメラにありました。
この作品では、ゼンマイ式の小型カメラが使われており、短時間しか撮影できなかったそうです。そのため、細かいカット割りにせざるを得なかったのです。
しかし、そのおかげでエリック・ロメール作品ではあまり見られないようなカット割りであったり、構図や撮影方法に工夫を凝らしたりと、いい意味でエリック・ロメールらしくない作品だと感じました。
その③
ゴミをポイ捨てする男
主人公の男は、サクランボの種を道に吐き捨てますし、サブレの包み紙を道や側溝にポイポイ捨てていきます。
こういったモラルに欠ける行為をする男は、人間関係においてもモラルに欠ける行動をとることを表わしています。
普段の何気ない行動や仕草が、その人の性格や人間性を表すと取られることもあるので、私たちも日常生活において注意しないといけませんね。
最後に
自分はモテると自覚している男と、自分を「シェフのお菓子」にたとえるシルヴィー。そして、二人に平凡と評価されるジャクリーヌ。
恋愛カーストにおける上級階級である「モテ」と下級階級の「非モテ」の差を、まざまざと見せつけられた、そんな印象を受けた作品です。
恋愛カーストの下級階級の私には、到底主人公の男には共感できず、ただただジャクリーヌの不憫さを嘆くことしかできませんでした。
この作品から私が得た教訓
「人を知るには、発言の内容より日常の些細な行動を見た方がどんな人物かがわかる」
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