「さんかく窓の外側は夜」はどんな映画?
今回ご紹介するのは「さんかく窓の外側は夜」です。
この作品は2021年公開の作品で、ヤマシタトモコさんの同名コミックを実写映画化した作品です。
目次
作品情報
監督 | 森ガキ侑大 |
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公開年 | 2021年 |
キャスト | 岡田将生(冷川理人役) |
キャスト | 志尊淳(三角康介役) |
キャスト | 平手友梨奈(非浦英莉可役) |
キャスト | 滝藤賢一(半澤日路輝役) |
あらすじ
幼い頃から霊が見える三角康介は、除霊師・冷川理人と出会い、除霊作業の仕事を手伝うことに。
ある日、2人は刑事・半澤から1年前の未解決殺人事件の捜査協力を持ちかけられ、調査に協力する事となる。
調査を進める2人は自殺した犯人の霊と出会い、
「ヒウラエリカにだまされた」
という声を聞く。
犯人の霊を通して得た情報を元に真相に近づく冷川と三角。
そんな中、2人の前に「呪い」を操る女子高生の非浦英莉可が現れる。
監督・キャスト
監督は森ガキ侑大さんです。
数々のCMを手掛け、2018年に初の長編映画「おじいちゃん、死んじゃったって。」を発表。国内外の映画祭で高い評価を得ます。
除霊師・冷川理人を演じるのは、岡田将生さんです。
「アヒルと鴨のコインロッカー」でスクリーンデビュー。「ホノカアボーイ」「重力ピエロ」などで国内映画賞の新人賞を多数受賞されています。
その後も映画やドラマで活躍され、「宇宙兄弟」や「銀魂」、「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第1章」など、人気漫画を実写化した作品にも多数出演されています。
霊が見える力を持つ青年・三角康介を演じるのは、志尊淳さんです。
ミュージカル「テニスの王子様」で俳優デビュー。主な映画出演作に「帝一の國」「フォルトゥナの瞳」を始め、数々の映画やドラマに出演されています。
「呪い屋」をしている女子高生・非浦英莉可を演じるのは、平手友梨奈さんです。
女性アイドルグループ欅坂46のメンバーとしてデビュー。グループ脱退後、2018年公開作品「響-HIBIKI-」で映画初出演で主演を演じています。
また、「信じない力」を持つ刑事・半澤日路輝を演じる滝藤賢一さんや、宗教団体の教祖・石黒哲也を演じる筒井道隆さん、三角康介の母・三角則子役で和久井映見さんなどのベテラン俳優陣も豪華です。
ウサコックのおいしさ(おもしろさ)指数
2ウサコックです。(最高4ウサコック)
この作品は、ヤマシタトモコさんのコミックが原作の作品です。
マンガが原作である作品で気になるのは、やはり「原作の世界観を、実写で忠実に再現しているのか?」という点でしょう。
この作品においては、マンガとは別物として捉えた方がいいと思います。
マンガではあったコミカルさが息を潜め、シリアスな作品となっています。また、原作の特徴でもあるBL(ボーイズラブ)をに匂わせるような設定はほとんどありません。
映画の方は、現代社会の問題をテーマとして描いています。
心霊物の作品というより、人間ドラマの作品と考えた方がいいでしょう。
カプサ君の激辛(マニア度)指数
カプサ君の数が多いほど、マニア向けの作品となっております。
2カプサ君です。(最高4カプサ君)
この作品は、PG12(小学生には助言・指導が必要)に区分されています。
多少残酷なシーンは出てきますが、PG12だけあってそれほどグロくはありません。
この作品は心霊を除霊する「除霊師」のお話ですが、「心霊」や「呪い」をテーマにしたホラー作品ではなく、現代問題を反映した人間ドラマです。
ですので、霊をやっつけるとか、呪いを解く為に奔走するなどのアクション、もしくはサスペンス作品と思って鑑賞すると、ちょっと物足りないかもしれません。
感想と考察(ネタバレあり)
その①
マイノリティ(少数派)問題
この作品は「霊が見える」というマイノリティ(少数派)の苦しみや、それを隠して生きる息苦しさが描かれています。
主人公である三角康介は「霊が見える」という特別な能力を持っているのですが、その能力を人に信じてもらえず、幼少期にいじめられた経験があります。そのため、この能力の事を隠して生きてきました。
しかし、冷川理人や非浦英莉可という自身と同じ能力者と出会う事で、自分自身の能力から逃げずに向き合い、そして受け入れる事が出来ました。
「霊感がある」という同じマイノリティの人との絆や交流が、自分自身を認めてあげれるようになったのです。
現代社会において、マイノリティの方に対する「偏見」や「差別」はまだまだ残っています。
ここで描かれている三角康介の苦悩は、マイノリティの多くの方々が抱えている苦悩だと感じました。
その②
SNSでの誹謗中傷問題
この作品の重要なキーワードは「呪い」です。
「呪い」を作り出すために、人のマイナスの感情である「穢れ(けがれ)」を集める装置が出てきます。
その「穢れ」の1つに、SNS上で呟いた誹謗中傷が例に挙げられていました。
強いマイナスの言葉が「言霊」となって、「穢れ」や「呪い」を生み出すという事です。
実際、誹謗中傷により精神的に追い詰められる方々も少なくありません。
「呪い」といえば「心霊」がかけるものだとイメージしますが、「呪い」は生きている人間が生み出しているのです。
その③
マンガと映画との違い
マンガと映画との大きな違いの1つは、主人公の三角康介と冷川理人の関係性の描かれ方の違いです。
マンガの方は、2人はBL(ボーイズラブ)であるかのように描かれています。
冷川理人との恋愛関係については三角康介は否定していますが、時には恋愛感情もあるようなそぶりを見せます。
特にBLを意識させるところは2人で除霊する場面です。それはまるで2人が性行為をしているように表現されています。
マンガの方は、2人のこういった友だち以上恋人未満な描かれ方が魅力な作品でもあります。
しかし、映画の方は主人公2人から恋愛を想像するような要素はほぼありません。
強いて言えば、除霊するときに顔の距離が近い事ぐらいでしょうか。
どちらかといえば、映画の方はマイノリティの問題や、誹謗中傷の問題など、現代社会の問題を取り上げた社会派寄りの作品となっています。
そのため、マンガのようなコミカルなやり取りはなくなり、シリアスな作品として描かれています。
その③
黒い服を着る人間、白い姿の霊
劇中、登場する「人間」は黒い服を着ていて、「霊」は白く描かれています。
「人間」は、誰しもが「穢れ」を抱えて生きているので黒く描かれ、逆に「霊」になると「穢れ」がなくなり白くなると捉える事ができます。
始まってすぐのシーンでは、スクランブル交差点で三角康介が霊と遭遇するシーンがあるのですが、ここで通りゆく人々はみんな黒い服をきています。逆に霊は白い姿で現れます。
これは「生きている人」と「そうでない人」との対比として表しているのですが、それだけの効果だけではないように思います。
それは、自身の持つ能力のために心を閉ざし、他人と心の繋がりが持てない三角康介が、人の色(個性)を見ることができなくて、みんな黒い服を着ているように見えている、という三角康介の心理状態を説明しているとも受け取れるのではないでしょうか?
最後に
数々のCMを手掛けた森ガキ侑大監督とあって、かっこいいショットが多々ありました。
CMは、短い時間でインパクトを残さないといけないので、CM監督出身の監督は魅せるショットを創るのがうまいと思います。
特に、題名にも使われている「三角」の描き方にはこだわりを感じました。
三角形になっている螺旋階段の吹き抜けのショットはとてもきれいでしたし、冷川理人が張る三角形の結界も個人的には好みです。
この作品は人気マンガが原作の作品となりますが、原作を忠実に再現するというより、独自の解釈で作られた作品となっています。
ですので、マンガから読んでも、映画から観ても問題はありません。
どちらが自分好みか見比べてみてください。