「新解釈・三国志」はどんな映画?
今回ご紹介するのは「新解釈・三国志」です。
この作品は2020年公開の邦画で福田雄一監督作品です。
目次
作品情報
監督 | 福田雄一 |
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公開年 | 2020年 |
製作国 | 日本 |
上映時間 | 113分 |
キャスト | 大泉洋(劉備) |
キャスト | ムロツヨシ(諸葛亮公明) |
キャスト | 小栗旬(曹操) |
あらすじ
1800年前の中国。後に英雄と呼ばれる劉備は、義兄弟の関羽、張飛と共に、民の平和のために立ち上がり、乱世の時代を駆け抜けていくのだが・・・
福田雄一監督
大洗にも星はふるなり | (2009年) 主演 山田孝之 |
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勇者ヨシヒコと魔王の城 | (2011年) テレビドラマ 主演 山田孝之 |
銀魂 | (2017年) 主演 小栗旬 |
今日から俺は!! | (2018年) テレビドラマ 主演 賀来賢人 |
ヲタクに恋は難しい | (2020年) 主演 高畑充希 |
福田雄一監督は、大学時代に劇団「ブラボーカンパニー」を立ち上げ、座長として構成、演出を手掛けます。
卒業後、放送作家として数々のバラエティー番組を担当し、その後もドラマや舞台、映画の脚本、演出家と活躍の場を広げていきました。
ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズや、「コドモ警察」、「今日から俺は!!」など手掛けた作品は続々と大ヒットし、「コメディの奇才」と呼ばれています。
キャスト
蜀の将軍、劉備を演じるのは大泉洋さんです。
バラエティー番組や、コメディ作品にも多く出演している役者さんで、福田作品には初参加となります。
出演作に、「探偵はBARにいる」(2011)や「アイアムアヒーロー」(2016)などがあります。
魏の将軍、曹操を演じるのは小栗旬さんです。
日本を代表する役者さんで、2021年公開の「ゴジラVSコング」に出演し、ハリウッドデビューを果たしました。
福田作品には「銀魂」(2017)に坂田銀時役で主役として出演しています。
他にも、周瑜役の賀来賢人さん、諸葛孔明役のムロツヨシさん、董卓役の佐藤二郎さん、黄夫人役の橋本環奈さんなど、福田作品ではお馴染みの常連メンバーに加え、趙雲役で岩田剛典さんや、貂蝉役で渡辺直美さんなど、豪華キャスト陣が出演しています。
ウサコックのおいしさ(おもしろさ)指数
2ウサコック(最高4ウサコック)です。
前半部分が全然おもしろくなかったですが、後半は割りと好きでした。
1ウサコックに近い、2ウサコックです。
カプサ君の激辛(マニア度)指数
カプサ君の数が多いほど、マニア向けの作品となっております。
1カプサ君です。
老若男女問わず楽しめる作品です。
三国志を知らなくても特に問題はありませんが、知っていた方がより楽しめる作品です。
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感想と考察(ネタバレあり)
その①
時代考証的美女
渡辺直美さんが絶世の美女「貂蝉」役で出演されています。
絶世の美女として劉備たちの前に現れた貂蝉。
劉備は、彼女が絶世の美女だということに納得がいきません。そんな劉備に関羽と張飛がこう言います。
「兄者、この時代の美人と言えばこんな感じです。」
「時代考証的に言って、これは絶世の美女です。」
時代考証的美女ということで、劉備は納得します。
このシーンは、個人的にはあまり好ましく思いませんでした。
まず、この演出は渡辺直美さんに対する「容姿いじり」のように感じましたし、時代考証的美女というメタ発言(フィクション作品の登場人物が、視聴者や作り手の目線でする発言)という落としどころも、どこかしっくりきませんでした。
なぜ私が「しっくり来ない」と感じたのかを考えてみました。
まず、渡辺直美さんが絶世の美女役を演じることには異論はありません。
ただ、彼女のことを絶世の美女と思わない人物が3人(劉備・関羽・張飛)いたことが問題だと思います。
この場で貂蝉を美女だと思っているのは趙雲だけです。
もし、貂蝉が時代考証的美女というのであれば、我々の時代の目線で話している劉備以外の人間すべてが貂蝉のことを美しいと感じるべきです。
この時代で貂蝉のことを美しいと思うことはマジョリティ(多数派)であり、マイノリティ(少数派)ではありません。
しかし、このシーンでは、貂蝉のことを美しいと思うことがマイノリティのように描かれています。
そうすると、「時代考証的美女」の説明に矛盾が生じてしまいます。
ですので、関羽、張飛は貂蝉を美しいと感じる側にして、劉備だけを貂蝉を美しいと思わないマイノリティな存在にするべきだと私は思います。
そして、もう1人軍師のような武将、もしくは左慈(三国志に出て来る魔術師のような人物)を登場させて、彼が「彼女は時代考証的美女なんです」とそっと劉備に教える流れの方がしっくりきます。
そうすることで、このようなメタ的な視点を持つ人物は、劉備のような英雄や、軍師のような知力のある人物しか持てない「特別な能力」という裏設定ができます。
そのような設定があっても、今後の展開に幅が出ていいのではないかと思いました。(諸葛亮孔明はメタ視点をもっておらず、黄夫人は持っているとか)
その②
新解釈
「新解釈・三国志」というだけあって、原作とかけ離れた武将の設定はおもしろかったです。
劉備は、酔った時だけ人民の心を掴むカリスマ将軍になり、酒が入ってなければボヤいてばかりとか、諸葛亮孔明の策略はすべて妻の黄夫人が考えていたなど、これまでにない切り口でとてもよかったと思います。
ムロツヨシさん演じる諸葛亮孔明は、みんなの前で大見得を切るところと、妻に泣き付く情けないところの両方が描かれており、そのギャップが面白いと感じました。
ただ、劉備に関しては、もっと酔っぱらっているところを見せた方が、そのギャップを楽しめたのではないかと個人的には思っています。
最後のクライマックスにおいて、酔ってかっこいいことを言っている劉備のシーンを際立たせたいがために、劉備の酔っている姿を見せるのをクライマックスまで隠しておいたのではないかと推測します。
しかし個人的には、冒頭の「桃園の誓い」の前に、酔っぱらった劉備の演説を入れて欲しかったです。
その理由はこうです。
この作品のストーリーは、劉備・関羽・張飛の3人が義兄弟の契りを交わす「桃園の誓い」のエピソードから始まります。
この「桃園の誓い」のシーンは完全に「コント」でした。
映画が始まってすぐの、場もまだ温まっていない状態でいきなり「コント」を見せられても、観客は付いていけないのではないでしょうか。
実際、私は付いていけませんでした。
もしこの桃園の誓いのコントの前に、劉備が酔っぱらって格好いいことを言っているシーンを入れてみたらどうでしょう。
酔っている状態とシラフの状態のギャップを描くことで場を温める効果(漫才のつかみのような役割)と、劉備という人物像がよりわかりやすくなり、親近感を持って観ることができるという2つの効果が得られたのではないかと考えます。
劉備の設定はおもしろかったので、「酔った時はカリスマ」という部分を後半まで見せずに、会話の中だけで説明するのは少し残念に感じました。
最後に
この作品を観て、最初の「桃園の誓い」のコントに付いていけず、貂蝉のくだりで不快感を覚え、もう観るのをやめようかとも思いましたが、諸葛亮孔明を演じるムロツヨシさん、そして周瑜を演じている賀来賢人さんの登場によって、だんだんと作品に引き込まれていきました。
やはりこの2人と福田作品との相性は抜群だと感じましたし、作品の空気をガラッと変えることのできる素晴らしい役者さんだなと思いました。
また、福田作品の常連俳優である山田孝之さんの、アドリブのようにセリフを言っているという演技はやっぱりすごいと感じざるを得ません。
逆に、大泉洋さんと福田監督とのタッグは初めてだったので、大泉洋さんの魅力が十二分に発揮されていないように感じました。
しかし今後、福田監督と再タッグを組んだ時の相乗効果には期待しかありません。