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「シュザンヌの生き方」はどんな映画?
今回、ご紹介するのは「シュザンヌの生き方」です。
この作品は、1963年製作のフランス映画で監督はエリック・ロメール監督です。
作品情報
監督 | エリック・ロメール |
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製作年 | 1963年 |
製作国 | フランス |
上映時間 | 55分 |
キャスト | カトリーヌ・セロー(シュザンヌ) |
キャスト | フィリップ・ブゼン(ベルトラン) |
あらすじ
薬学科の学生であるベルトランは友人のギヨームとカフェで待ち合わせをしていました。
ギヨームは、隣の席に座っていたシュザンヌを自宅で開くパーティーに誘います。
パーティーに訪れたシュザンヌは、ギヨームとの距離を縮めていくのですが・・・
エリック・ロメール監督
エリック・ロメール監督は1950年代に始まった映画運動「ヌーヴェル・ヴァーグ」を代表する映画監督です。
エリック・ロメール監督は、何本かの作品を連作として1つのシリーズとしているのが特徴です。
1960年代から1970年代にかけて「六つの教訓話」シリーズと題して6つの作品を発表しました。
1980年代には、「喜劇と格言シリーズ」として6作品、また、1990年代には「四季の物語」シリーズとして、春夏秋冬を描いた4作を発表しています。
1962年、エリック・ロメールはバルべ・シュローデルと共に映画製作会社「レ・フィルム・デュ・ロサンジュ」を創立します。そして、この「シュザンヌの生き方」も同社製作の作品です。
バルべ・シュローデルは「モンソーのパン屋の女の子」では主演兼プロデューサーを、また「シュザンヌの生き方」ではプロデューサーを務めてます。
「六つの教訓話」シリーズ
モンソーのパン屋の女の子 | (1962)主演 バルべ・シュローデル |
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シュザンヌの生き方 | (1963) 主演 ジャン・ルイ=トランティニャン |
コレクションする女 | (1967) ベルリン国際映画祭 銀熊賞 審査員グランプリ |
モード家の一夜 | (1969) 主演 ジャン・ルイ=トランティニャン |
クレールの膝 | (1970) 主演 ジャン=クロード・ブリアリ |
愛の昼下がり | (1972) 主演 ベルナール・ヴェルレー |
「六つの教訓話」は2人の女性に対して、感情が揺れ動く男性のお話が題材となっています。
キャスト
この作品に出演している若者たちは演技経験がありません。
演技経験がないキャストを編成したことで、リアルな若者たちの姿が描かれています。
しかし、主人公のベルトランが心情をナレーションで語るスタイルのため、ドキュメンタリーのようなリアルさはありません。
ウサコックのおいしさ(おもしろさ)指数
2ウサコックです。(最高4ウサコック)
淡々と話が進んでいくので、少し退屈に感じました。
55分の作品ですが、もう少し短くてもいいように感じました。
カプサ君の激辛(マニア度)指数
カプサ君の数が多いほど、マニア向けの作品となっております。
4カプサ君です。映画マニア向け作品です。(最高4カプサ君)
1960年代のモノクロ作品であり、ストーリーも淡々と進んでいき、盛り上がりに欠けるので万人向けの作品ではありません。
しかし、若者たちの恋愛模様や人間関係など不変的なテーマを描いた作品ですので、今観ても、共感できる内容となっております。
感想と考察(ネタバレあり)
その①
ベルトラン
ベルトランはどちらかというと内向的なタイプです。
そのため、社交的なギヨームに対してコンプレックスを抱いています。しかし、自分自身、そのことを認めたくないので、自分は「ギヨームを心酔している」と思い込んでいます。
ギヨームと行動を共にすることで、内向的な自分もパーティーに参加することができ、他の内向的な人とは違うという優越感もあるように感じます。
ギヨームがナンパする女性は、一般的にキレイと思われるようなタイプではありませんでした。
これは、ギヨームの女性のタイプがそうだったのですが、ベルトランはギヨームがナンパの成功率を挙げるため、わざとそういう女性を狙っているのだと思っていました。
そのためベルトランは、ギヨームに口説かれ、なびいた女性を蔑んでみていました。
その女性たちは、ギヨームに「遊ばれている女性」と考えていたからです。
それはシュザンヌも例外ではありませんでした。
しかし、ベルトランのシュザンヌに対する感情はそれだけでないように思います。
ベルトランはシュザンヌに自分自身を投影していたのではないでしょうか。
シュザンヌは最初、ギヨームの誘いをずっと断っていました。結局、誘いに応じてパーティーに来るのですが、シュザンヌは1人で過ごしパーティーでは浮いた存在でした。
その姿を見ると、シュザンヌは社交的な人間とは思えません。どちらかといえば、内向的なタイプと見受けられます。
ベルトランはそんなシュザンヌを見て自分と性格が似ていると感じたと思います。
そして、ベルトランは、ギヨームに遊ばれている(と思っている)彼女を蔑むようになります。「自分も内向的だが、シュザンヌとは違う」そう思っていたのではないでしょうか。
しかし、そんなシュザンヌは結婚します。
そして、シュザンヌは決して「自分のコンプレックスの象徴」のような存在ではなく、しっかりとした考えを持った1人の自立した女性だと気付きます。
結局、ベルトランはソフィーの言うように考えが子供だったといえます。
人を見下すことで、自分の価値が上がったように思い込む。
そういった考えは、自分を成長させることはありません。
しかし、この出来事により今後ベルトランは成長していくことでしょう。
その②
シュザンヌ
シュザンヌは内向的な性格です。
同じような性格のベルトランと違う点は、自分の性格と向き合って自分を変えたことです。
シュザンヌはギヨームと別れた後、誰かに誘われて行動するという「受動的」な性格を変えるべく、ベルトランをパーティーに誘います。
同じく「受動的」なベルトランと一緒にいると落ち着くのと、ベルトランも変わって欲しいという気持ちがあったのかもしれません。
そんなシュザンヌに付け込んで、ギヨームは食事代などをたかります。
シュザンヌは当初、ギヨームに未練があったと思います。しかし、こういった行動によってギヨームを吹っ切るきっかけになりました。
また、ソフィーや結婚相手であるフランクと出会い、交友関係を広げたことも彼女にとって大きかったと思います。
特に、ソフィーという自分を認めてくれる存在と出会えたことがシュザンヌにとっては大きかったのではないでしょうか。
人生において、大切なのは「自分を認めてくれる友人」との出会いだと感じました。
その③
シュザンヌのサイズの合わない靴
作中後半のパーティに参加したシュザンヌは、新しい靴が小さいと嘆いていました。
「これしか履く靴がないので、我慢している」
と言っています。
このシーンを見た時は、シュザンヌが、お金もないのにパーティーに参加していることにかなりすさんだ印象をうけました。
しかし、シュザンヌはそうではありませんでした。
この時点でシュザンヌの結婚はもう決まっていたのでしょう。
そして、新しい生活のための新居に荷物をすべて送っていたのではないでしょうか?
そう考えると、靴やスカートは「今自分が身に着けているものしかない」とシュザンヌが言っていたのも納得できます。
そして、この夜のパーティーが独身最後のパーティーだったと推測します。
シュザンヌは同棲するまでの生活費はもっていたと思います。
しかし、パーティー代を捻出するため、節制して過ごしていたのではないでしょうか。
そのため、靴を買う際、サイズの合わなくても「安い靴」を選んだのだと推測します。
パーティーの帰りにシュザンヌが「タクシー代貸して」とベルトランに言います。
もちろん、シュザンヌはタクシー代は持っていなかったと思いますが、最後にベルトランとゆっくり話をしたいという想いもあったように思います。
ベルトランがお金を持っていないことを見越していたのではないでしょうか。
モジモジしているシュザンヌの様子は、ベルトランが家に誘ってくれるのを待っているようにも見えます。
そして、ベルトランの部屋につくと、シュザンヌはベルトランに恋愛のアドバイスをします。
これは、結婚し夜遊びから卒業するシュザンヌから、友人として、また似た者同士としての最後のメッセージです。
こうした行動を見ると、シュザンヌはベルトランのことを弟のような存在に思っていたのではないでしょうか。
そしてベルトランにも幸せになって欲しいと願っていたに違いありません。
最後に
シュザンヌがやたらサイズの合わない靴の話をしていたのは、シュザンヌが結婚することの伏線だと思います。
このような一見、意味のなさそうな会話やセリフに伏線を張っているのがいいなと感じました。