1980年代ヨーロッパ

映画「美しき結婚」感想(後半ネタバレあり)エリック・ロメール監督作品

「美しき結婚」はどんな映画?

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今回、ご紹介するのは「美しき結婚」です。

この作品は1981年フランス製作で、エリック・ロメール監督が1980年代に撮った「喜劇と格言劇」シリーズの第2作目となります。

 


美しき結婚 (エリック・ロメール コレクション) [DVD]

目次

作品情報

監督エリック・ロメール
製作年1981年
製作国フランス
上映時間100分
キャストベアトリス・ロマン(サビーヌ)
キャストアンドレ・デュソリエ(エドモン)
キャストアリエル・ドンバール(クラリス)

あらすじ

サビーヌは、妻子ある画家のシモンと不倫関係にありました。

不倫関係に嫌気が差したサビーヌはシモンと別れ、まだ相手がいないのにもかかわらず「結婚する」と周囲に宣言します。

そんなサビーヌは、友人のクラリスから弁護士をしている従兄弟のエドモンを紹介され、彼と結婚しようといろいろと画策するのですが・・・



エリック・ロメール監督

エリック・ロメール監督は1950年代に始まった映画運動「ヌーヴェル・ヴァーグ」を代表する映画監督です。

エリック・ロメール監督は、何本かの作品を連作として1つのシリーズとしているのが特徴の1つです。

1960年代から1970年代にかけて「六つの教訓話」シリーズと題して6つの作品を発表しました。

1980年代には、この「美しき結婚」を含む6作を「喜劇と格言シリーズ」として、また、1990年代には「四季の物語」シリーズとして、春夏秋冬を描いた4作を発表しています。

「喜劇と格言シリーズ」

この作品を含む「喜劇と格言シリーズ」は、恋愛をテーマに描いた会話劇です。「喜劇と格言シリーズ」という事で、各作品の冒頭にはその作品についての「格言」が出てきます。その「格言」が作品のテーマになっているので、ストーリーにすんなりと入っていく事ができます。

飛行士の妻(1980)「人は必ず何かを考えてしまう」
美しき結婚(1981)「夢想にふけらない人がいようか、空想を描かない人がいようか。」
海辺のポーリーヌ(1983)「言葉多き者は災いの元」
満月の夜(1984)「二人の妻を持つ者は心をなくし、二つの家を持つ者は分別をなくす」
緑の光線(1985)「ああ、心という心の燃える時よ来い」
友だちの恋人(1987)「友だちの友だちは友だち」

キャスト

サビーヌを演じるのはベアトリス・ロマンです。

エリック・ロメール監督作品である、「クレールの膝」や「レネットとミラベル四つの冒険」、「恋の秋」などに出演しています。

サビーヌの友人クラリス役はアリエル・ドンバールです。

エリック・ロメール監督作品では「海辺のポーリーヌ」「木と市長と文化会館」に出演。また、俳優だけでなく、歌手としても活躍されています。



ウサコックのおいしさ(おもしろさ)指数

2ウサコックです。(最高4ウサコック)

恋愛の延長が結婚と考えるクラリスと、結婚と恋愛を分けて考えるサビーヌという結婚観の違う女性2人に、仕事が忙しい弁護士のエドモンを加え、男女様々な結婚観を描いています。

身近にいそうな人々の日常を描いていますが、特に感情移入できるような登場人物がいませんでした。

主人公のサビーヌは、感情的で子供っぽい女性です。

そんなサビーヌの行動や言動をどう受け取るかによって評価が分かれると思います。

カプサ君の激辛(マニア度)指数

カプサ君の数が多いほどマニア向けの作品となっております。

3カプサ君です。(最高4カプサ君)

特に大きな事件が起こるともなく、日常を切り取ったような作品です。

そのため、観ていて退屈に感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

結婚#婚活不倫弁護士ルマン頑固感情的策略




感想と考察(ネタバレあり)

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1つお断りしておきますが、これからお話する感想はあくまで僕が感じた感想です。製作者の意図や文化人の批評とは違うことがあります。しかし、そこは皆さまの温かい善意によって読んでいただけたらと思っております。

その①

サビーヌ

サビーヌの性格は、短気でせっかち(母親、友人談)で、こびない、あまのじゃく(本人談)また、衝動的で子供っぽい性格です。

美人なのでモテますが、付き合う人は既婚者が多く、関係を持つと相手の態度は変わります。

気難しい性格のため、サビーヌのことを「彼女」というパートナーの形で付き合う男性は中々おらず、「愛人」という肉体だけの関係を求める既婚者の男性と付き合うことがほとんどです。

そんなサビーヌは、弁護士のエドモンとの結婚を望むのですが、一緒に食事をした際、「商売が嫌い」だと言います。

弁護士事務所を開き、仕事中心の生活をしているエドモンは、彼女の意見に共感することはできなかったことでしょう。

このように、相手の好みに寄せていくというタイプの女性ではなく、素の自分を出せば、相手が好きになってくれるという「容姿の良さ」を自覚している女性の「うぬぼれ」を感じました。

その②

ル・マンの街並み

ル・マンの街をサビーヌの運転する車が走るシーンがあるのですが、その車から撮られた古い街並みや建物がとても美しく、私のお気に入りのシーンの1つです。

運転席の前に置かれたミラーにサビーヌの表情を映しつつ、歴史を感じさせる建物や、自然が多い田舎道を走る車からの映像は、まるで車に同乗しているような感覚になりました。

80年代のノスタルジックさと、石畳の道などに見られる歴史のあるフランスのレトロな風景と相まって、とても美しい街並みです。

1度訪れてみたい街の1つになりました。

その③

結婚観

不倫関係を終えたサビーヌは、「結婚する」と宣言します。

相手もまだいないのに「結婚する」と公言するサビーヌに対して「変わった女性だ」と感じた人もいらっしゃったことでしょう。

それは「結婚相手は、一定の期間その相手と過ごして、今後の人生を共に歩んでいける人物かを慎重に見極める」という考えがあるからだと思います。

すなわち、「結婚」を「目的(ゴール)」ではなく、「過程(プロセス)」と捉えているから事です。

しかし、サビーヌは、「結婚」を「目的」として定めました。

これまでの恋愛では体目当ての男性(特に既婚者)と付き合うことが多かった経験から、「恋愛」の延長に「結婚」があるとは思えなかったからです。

サビーヌと同じ価値観の男性がいれば、すぐに結婚することも不可能ではありません。

サビーヌはその「結婚」という「目的」を達成させるため、「結婚したい」という願望ではなく「結婚する」と断言しました。

このように「目的」を周りの人々に断言することは、自分自身を追い込む効果がありますし、周りの人の協力を得られやすいというメリットもあります。

実際、「結婚する」と断言したことにより、友人のクラリスにエドモンを紹介してもらえました。

今回サビーヌは、エドモンと結婚することは叶いませんでしたが、「目的」を達成するためのアプローチとしては、決して間違いではなかったと思いました。

最後に

オープニングでダサかっこいい(?)80年代テクノの曲が流れてきたときは少し驚きましたが、観終わってみると、いつものエリック・ロメールらしい作品だったのでホッとしました。

この作品は、友人のクラリスに煽られたサビーヌが、妄想を膨らませ、鈍感力というか、ポジティブ思考というべきか、猪突猛進で突き進み、玉砕するといったお話です。

自分の思惑がすべて相手に見透かされているのに、それに気付いていないサビーヌを見ていると、こちらが恥ずかしくなってきます。

しかし、サビーヌに嫌悪感を抱くことはありませんでした。

他人の目を気にして、変に空気を読んで遠慮してしまうような私には、見習うべき点があるように感じたからです。

自分では、他人の気持ちを察したつもりでいても、他人の気持ちを完全に理解することはできません。

自分でネガティブな想像をして、行動を制限するよりは、サビーヌのようにチャレンジして、結果がどうであれ、はっきり結果を出すことも大切だと感じました。

ナツカレー
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サビーヌは、感情的で子供ぽいところはあるけれど、憎めない女性だなあ
うさカレー
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めんどくさい女性と感じる人もいると思うよ